御曹司と婚前同居、はじめます
「え? いいの?」

「ああ。月曜まで待とうと思っていたが、もう我慢できない」


そんなに苦痛なんだ。……そりゃそうよね。

瑛真の左肩におもむろに手を伸ばす。


「もう、取る?」


瑛真は微笑んで、「頼む」と呟いた。

あれだけ恥ずかしがっていたのに、今では指先が震えることもなく服を脱がすことができるようになった。

包帯を解いて、露わになった艶めかしい肌から顔を背けた。

さすがに、これは未だに慣れない。


「包帯の跡が痒いな。美和、掻いてくれないか?」

「なっ、なにをいっ……」


動揺し過ぎてちゃんと喋れていない。

瑛真は笑いを堪えながら服を着る。

もうっ。人を恥ずかしがらせて楽しむ悪い癖を直して欲しい。

身軽になった瑛真と早速キッチンに並んだ。

普段から自炊をするといっていた通り、包丁さばきはかなりの腕前だった。


「私より料理上手なんじゃ……」


女としてこれはショックだ。


「それは褒め過ぎだ。美和の手料理以上に美味しいものなんてこの世にあるわけがない」

「頭がおかしくなった人みたいなこと言わないでよ」


たわいない会話すらも楽しくて自然と笑顔がこぼれる。瑛真のそばにいられることがこんなにも幸せなのだと改めて感じた。
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