御曹司と婚前同居、はじめます
 ◇


「美和に一つ確認しておきたいことがある」


お腹いっぱいになってすっかり寛いでいると、真面目な顔をした瑛真がダイニングテーブルに両肘をついて、手の甲に顎を乗せながら見つめてきた。

片手では出来なかった仕草を披露される度に心臓を打ち抜かれて辛い。色気が漏れすぎている。


「何?」

「もう美和を拘束する必要がなくなった。だから雇用契約を解除してもらって構わない」


私は黙って頷く。

こうなることは予想していた。


「介護の職に戻りたいんだろう? もう面接の日程も決まっているのか?」

「どうしてそれを?」

「スーツ」


まさかそれだけで?

ほんと、推察力と観察力に脱帽させられるわ。


「まだこれからよ。日中も家にいるとはいえ雇われている身だし、瑛真に相談しようと思っていたところだったの」

「そうか。それなら話は早いな」


望んでいたことだけれど、少し寂しくもある。
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