御曹司と婚前同居、はじめます
あれほどまでに福祉の仕事にこだわっていた美和だったが、最近は思うところがあるらしい。今後どう転ぶにせよ全力でサポートをするつもりだ。

ダイニングテーブルにはワインとグラスが用意されていた。

俺が購入したワインではない。

ワインセラーにはまだ腐る程ワインが並んでいるのに、美和はたまにリーズナブルな価格の酒を買ってくる。

美和はしまった、という顔をしてワインを片付けようとした。


「ごめん。瑛真はこんな安物飲まないか……」

「そんなことはない。最近のテーブルワインはどれも美味しい」


美和はほっとした顔を作る。

ほんと、顔にすぐ出るな。

正直なところそこらのスーパーで売られているワインは飲まない。けれど、そんなことを言ったら美和が気落ちしてしまう。

好きに使っていいとクレジットカードも持たせているのに、美和が買うものはいつだって庶民的なものばかりだ。

……まったく。欲深くないから、これでは甘やかすこともできない。


「おばあちゃん、今日も寝てばかりだった」


美和がワインをグラスの中で揺らしながらぽつりと呟いた。

最近の美和は時間の許す限り施設へと足を運んでいる。
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