御曹司と婚前同居、はじめます
第2話 * 強引な契約
どんな高層マンションに連れて行かれるのだろうと考えていた私の期待は、見事に裏切られなかった。
「今日は天気も良いですし、こちらでもよろしいでしょうか?」
マンション前の道路に車を停止させた後、柏原さんがバックミラー越しに聞いた。
「構わない」
返事を聞いてすぐに柏原さんは外に出て後部座席のドアを開く。
先に降りた瑛真が手を差し出してくれた。
こういう扱いを受けるのは久し振りだな、と懐かしい気持ちになる。
私がまだお嬢様をやっていた頃はこれが日常の一部だった。
瑛真のエスコートを受けて外へ出ると、柔らかな陽射しが頬を照らした。
「駐車場に止めてからお部屋に伺います」
柏原さんは一礼してすぐさま車へと乗り込む。
マンションに入るまで瑛真のことを見送らないんだ。
不思議に思っていると、瑛真が「気を利かせてくれているんだ」と言う。
首を傾げると、
「俺が美和と二人きりになりたいのを察してくれたんだよ」
瑛真は微笑を口角に浮かべた。