御曹司と婚前同居、はじめます
「気に入らなければ引っ越せばいい。必然的に女性の方が長い時間家で過ごすことになる。だからこそ妻が住みやすい空間にすべきだ。美和の居心地の良い空間を作るためなら時間も金もいくらでもかけよう」


考えごとをしている間に最上階へと到着していた。

とても素敵な言葉とげんなりする言葉を同時にもらって複雑な心境だ。

まあ、結婚なんてしないから気にしなければいいんだけどね。

どうせ話が通じないので、思いは心に留めておいて廊下を抜けてリビングへと入った。

――う、わぁ……。

まず、全面ガラスのフィックス窓に目を奪われた。

このタワーマンションは眺望重視で造られているらしい。

ホテルの客室以外ではこの景色はなかなかお目にかかれない。

一歩一歩慎重に足を踏み出して窓へと近付いた。


「夜景は綺麗だと思う。俺はあまり興味ないんだけど、美和には気に入ってもらえるんじゃないかな」


夜景を見ることが出来る時間帯までここにいるつもりはない。……でも、見てみたいな。
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