御曹司と婚前同居、はじめます



事の発端は、父親が持ってきた私への仕事の依頼だった。

スキルアップの為に福祉に関する幾つかの資格を習得しながら、当時勤めていた介護施設を辞めて新しい仕事へ転職しようと考えていたところへ今回の話を持ち掛けられたのだ。

その内容は、おじいちゃんの古くからの友人が骨折をして私生活に支障が出て困っているから、怪我が治るまでの間介助をして欲しいというものだった。

施設で介護職員として働いてはいたけれど、ホームヘルパーという職種は経験したことのないものだし、いい経験になると思ってこの話を受けることにした。

おじいちゃんの友人というのなら八十前後だろうし、怪我も老人によくある大腿骨近位部骨折あたりだろうと勝手に思っていた。

事前に確認しなかった私にも落ち度があるけど……。でも、こんなふうに騙されるなんて誰が思う?

――しかも相手が悪い。瀬織(せおり)瑛真は私の幼馴染だ。

そして、瀬織建設の次期社長――のはず。
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