御曹司と婚前同居、はじめます
何の説明もないままリビングに一人残された私は、ひとまず瑛真が用意してくれたものを確認しようと家の中を探検することにした。
――と、その前に二つの電話番号を携帯に登録しておかなくちゃね。
携帯のディスプレイに表示された時刻は十七時半を過ぎたところだった。
ホテルで待ち合わせたのが十五時だったので時間の経過の速さに驚く。
「さてと」
リビングを出てまず初めに玄関へと向かう。
シューズクロークらしき扉を開けると、そこには女性物のスニーカーからパンプスまでのありとあらゆる外靴が揃えられていた。
「わっ、可愛い」
この部屋に上がった時に瑛真が出してくれたルームシューズも小振りのリボンが付いた可愛らしいデザインのもので、私の嗜好をきちんと取り入れてくれているのが窺えた。
サイズを確認すると私のサイズになっている。そして、目に入った高級ブランドのロゴに息を呑む。
「ウソでしょ……」
こんなの一体どこに行く時に履けっていうのよ。
扉を閉めて、動悸を落ち着かせるために一度大きな深呼吸をした。