御曹司と婚前同居、はじめます
いくら家族ぐるみの付き合いで幼馴染だからといっても、私とは住む世界が違いすぎる。そんな人の私生活に至るまでの介助など出来るはずがない。

お父さん、一体何を考えているのよ……。

頭が痛くなる。はあ、と小さな息をついた。


「住み込みでお世話をすることになっていたよね?」


身体が不自由なおじいちゃんだからと何の心配もしていなかったけど、相手が瑛真となればそうはいかない。


「それにどこが不自由なの? ここまで来ることが出来るくらいなのに」

「美和、少し落ち着こうか」


ハリセンボンのように全身から棘を出している私の背中を、瑛真はなだめるようにそっと優しく撫でた。

不覚にも、その動作一つで昂ぶっていた気持ちがしゅうっとしぼんでいく。

イケメンはずるい。こんなの不可抗力だ。


「おじさんも、ひとまず座りませんか?」

「ああ、そうだな」


瑛真に促されて、適度な硬さのとても座り心地の良い一人掛けソファへ腰を下ろす。
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