御曹司と婚前同居、はじめます
「早速ですが練習しましょう」


石原さんが瑛真のボタンを外していく。

なんだか見てはいけないものを見せられているように感じるのは、こんな時でも色気を漂わせている瑛真のせいだ。

シャツを脱ぐと、インナーの上から包帯が巻かれていた。

裸じゃなくて良かったと内心ほっとする。

石原さんの言うように包帯の巻き方は意外と簡単だった。ただ圧迫の加減が難しく、弱いと固定力に欠けるし、強いと血の巡りが悪くなって手先に痺れが出てしまう。

四苦八苦していると、額にじわりと汗が滲んできた。

巻き直すこと六回目。やっとのことで石原さんと瑛真から合格を言い渡された。


「つ、疲れた……」


手のひらで汗を拭う。


「堂園さん筋が良いですよ。手先が器用なんですね」

「いえ、そんな」

「あとは週に一度、月曜の朝にお伺いします」

「そんなに間が空いても大丈夫なんですか?」

「今はとにかく安静にすることが一番ですから。リハビリの段階になれば毎日でもお付き合い願うことになりますよ」


石原さんはにこやかに笑う。
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