御曹司と婚前同居、はじめます
またこの後着替えを手伝って包帯も巻かなければいけないなんて……。

プライベートと仕事の境がないので気が休まる時がない。


「こんなのが二ヶ月?」


いや、動けるようになれば身体的介助はなくなるので実質一ヶ月か。

たった一ヶ月のことなのに気が遠くなりそうだ。

事の重大さに気づいてしまい後悔の波がどんどん押し寄せる。

ソファであれこれと考えごとをしていたら瑛真が戻ってきた。

私には可愛らしいパジャマを用意してくれたのに、瑛真はTシャツに短パンというかなりラフな恰好だった。

左肩が下がっている。

固定がなくなるとやっぱり下がるのか……。


「すぐ巻く?」

「汗が引くまで少し待ってくれ」


首に巻いたタオルでがしがしっと頭を掻きながら私の隣に座った。

大きなソファなのだから、わざわざ隣に座らなくてもいいのに。


「美和は湯冷めしていないか?」


下ろしている髪の一束を掴んではらりと落とした。

私は「うん」と頷く。

瑛真から良い匂いが漂ってくる。微かに伝わる高い体温にもドキドキしてしまう。


「髪を下ろすと雰囲気が変わるな」


また伸びてきた手が私の頭の上を行ったり来たりしながら優しく撫でる。

異性にこんなことされたの、おじいちゃん以来かもしれない。
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