御曹司と婚前同居、はじめます
「赤と白どっちがいい?」

「今日は赤の気分かな」

「奇遇だな。俺もそう思っていた」


本当に? 私に合わせてくれただけじゃないの?

この人は相手を喜ばせるのが上手いのだと思う。

そのせいで未だに緊張はしているけれど心は確実に許しはじめている。

二ヶ月も一緒にいて、果たして無事でいられるかな……。

お酒を飲む準備を始めた後ろ姿を呼び止める。


「先に巻かせてもらえない? 酔っぱらったら上手く出来る自信がない」

「そうか。じゃあ頼む」


椅子に腰掛けた瑛真の身体に時間をかけて丁寧に包帯を巻いていく。


「どう?」

「ちょうどいい」

「良かった。上から何か羽織る?」

「部屋の椅子にパーカーが掛かっているから持ってきてもらえるか?」

「うん」


持って出てくると瑛真はグラスにワインを注いでいた。

瑛真にパーカーを羽織らせてから乾杯をする。

今更だけどワインなんか飲んじゃっていいのかな。もし瑛真の身に何かあったら私が介助しなければいけないのに。
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