御曹司と婚前同居、はじめます
「ねえ、どうしてここで寝ているの?」

「ここが寝室だからに決まっているだろう」

「そうだけど、瑛真の寝室はあっちの部屋でしょ?」

「あのベッドはダブルだから、二人で寝るには狭い」

「……どうして二人で寝る前提なの?」

「美和は結婚しても一緒に寝ない派なのか?」


噛み合わない会話ながらも彼の言いたいことを理解して、急速に胸の奥のほうがずしりと重くなった。


「私たちまだ付き合ってもいないし、一緒に寝るのはおかしいよね? 物事にはきちんとした順序っていうものがあるでしょ?」

「女という生き物は、どうしてそういう細かいところにこだわるのだろうな」


カチンときた。

すっと上半身を起こし、瑛真を見下ろして言い放つ。


「誠実な人が好きだからじゃない? すぐに手を出すような男性には誠実さなんて感じられないもの」


かなり棘がある言い方をした。

瑛真は何かに気づいたようにハッとして、それからすぐに困ったように目尻を下げた。


「その通りだな」


言い合うつもりで強く出た手前、素直に謝られてしまってまごまごしてしまう。


「分かって……くれれば、いいんだけど」
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