御曹司と婚前同居、はじめます
「私は自分というものを普通の人よりもしっかりと持っているつもりよ」

「分かっているよ。どうしたんだ？　何を怒っている？」

「怒りたくもなるわよ！　見てくれだけで好きになられても何も嬉しくないわ！」

「結構ヒステリックなんだな」


温度差のある態度が余計にムカつく。

私ばっかり……！


「言っておくが、別に見た目だけが好きと言っているわけじゃない。俺は堂園美和という人間に惚れ込んでいるんだ」

「とってつけたように言われてもね」


感情のコントロールができない。今はもうこれ以上話をしたくない。

部屋から出て行こうと瑛真に背を向けたところで、「少し落ち着いてくれ」と後ろから抱き寄せられた。

苛立っている私とは対照的に、腰に回った手からは優しさを感じられる。


「離して」

「離したら逃げるだろ」

「あたりまえでしょ」

「だったら離さない」


どんどん互いの顔の距離が縮まる。

見れば見るほど瞳の美しさに惹きつけられてしまう。

濁りのない白目が黒目を余計に引き立てているのだ。

またどこかにキスをされるのかな。と、そんなことをぼんやりと思ったとき、


「逃げないんだな」


笑った目が挑発してきた。
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