御曹司と婚前同居、はじめます
「パソコンなどの事務作業はこなせる」


その為に腕は吊らないでいるということなのだろう。

けれど、いくら固定しているからといっても包帯やサポーターだけでは負担が大き過ぎる。


「治るのに時間がかかるよ?」

「ああ。でも、仕方ない」


少しも困惑した表情を見せないあたり、こうすることが当たり前で、他に選択肢などないと考えているのだろう。

さすが、背負うものが大きい人は違う。仕事を休もうとか考えもしないんだろうな。


「怪我に関しては分かった。あ、お父さん。脱臼は骨折じゃないからね?」


お父さんは呆れた顔で「そうだな」と笑った。

どうせ、そんな細かいこと言わなくてもいいって思っているんだろう。だけどそこはきちんとしておかないとスッキリしない。


「困っているっていうのは本当なんだろうね。だけど、家のことはハウスキーパーを雇えばいいし、身の回りのことに関してはそこの人に頼めばいいんじゃない?」


財力があるならその辺りはどうにでもなると思う。

私に顎でしゃくられたお付きの男性は複雑そうな表情を浮かべた。
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