御曹司と婚前同居、はじめます



午後からは現場に赴くということで、昼食は道すがらとることになった。

柏原さんも交えながらでの食事はやっぱり喉を通っていかない。

二人とも食べ方が綺麗なので気後れしちゃうんだよなぁ。

育ちの良さというのはやはりこういう所にあらわれる。


「そういえばさっき思い出したんだけど、おじさまの弟さんってお医者様じゃなかった? 開業医って聞いた気がするんだけど」

「ああ、そうだ」

「創一郎さんは後を継がなくて大丈夫なの?」


無表情だった眉根がぴくりと動いた。


「やけに親しい呼び方をするんだな」


しまった。ここはやっぱり名前じゃなくて専務と呼ぶべきだったのか。


「創一郎の弟が跡を継ぐから問題ない」

「見事に男系なのね」

「妹もいるぞ」

「ふうん……いいなぁ。私も妹が欲しかったな」


自分にも兄弟がいればあそこまで寂しい思いをしなかったかもしれない。
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