御曹司と婚前同居、はじめます
車に乗り込み、この後もう一件現場に立ち寄ってから直帰すると聞かされ、私って本当に役立たずだなと肩を落とした。
 
隣から強い視線を感じて、何だろうと横を向くと真剣な眼差しとぶつかった。

きっとまた余計な心配をしているのだろう。

こんな些細な変化に気づいてくれるなんて、ほんとに、なんていうか……そこまで想われたら心が揺らいじゃうじゃない。


「ねえ」

「何だ?」

「次のお休みに行きたいところがあるんだけど……」

「どこだ?」

「おばあちゃんのところ」


少し考える素振りを見せてから、


「俺も一緒に行ってもいいか?」


遠慮がちに聞いてきた。


「いいけど、知っているんだよね?」

「ああ」

「それならいいけど」


おばあちゃんは施設に入所している。決して楽しい場所へ行くわけではない。

それを承知で一緒に行きたいと言ってくれて嬉しかった。


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