御曹司と婚前同居、はじめます
「どうして行けないと?」


瑛真が怪訝な顔で尋ねる。


「最近体調がよくなくてね。ほら、自分のことは自分が一番分かるものでしょ?」


胸にズキッと痛みが走った。


「やだ、おばあちゃん。大丈夫だよ」


そんなこと言わないで。


「そうだよねぇ、ごめんね。おばあちゃん、美和のドレス姿見るまでは頑張るよ」


弱りきった表情が、昨日道で出会ったおばあさんと重なる。

あの時おばあさんの顔を見て、何故だかおばあちゃんに無性に会いたくなった。

それが今どうしてだか分かった気がする。

いつからだろう? 見当がつかない。きちんとおばあちゃんのことを見ていたつもりだったのに、いつからこんなに寂しい顔をするようになったのかが分からない。


「そうですよ。おじいさんの分まで祝ってあげてください」

「そうだねぇ」


瑛真の言葉に、おばあちゃんは輝きを取り戻して微笑んだ。

この笑顔を壊したくない。

こんなことよくないって分かっているけど――


「楽しみにしていてね」


本当のことが言えなかった。


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