視線の先には君がいた
5視線の先には君がいた
あの日、どうやって家に帰ったのかわからなかった。

気づいたら自分の部屋にいて、数学の問題集をすすめていた。


(楽しかった……)


少しの間だったけれども、声をかわせたこと。

恥ずかしくて消え入りたかったけれど、喜びには変わりがなかった。

目の前で、間島と視線を交わした。私だけを間島が見てくれた。

ぽきりとシャーペンの芯が折れる。


(あきらめたくない)




それからというもの、私は間島のことを見つめることが少し怖くなってしまった。

恥ずかしい。

好きだけど、好きだってことが知られていることが恥ずかしい。

そんな思いにまみれているものの、表面上はかわらぬ学生生活を送っていた。

そして、相変わらず誰かの視線を感じながら、気づかぬふりをしていた。

視線の主が間島だったらうれしい。

うれしい、だけど、彼女にはなれない。



それなのになぜ見るの?
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