視線の先には君がいた
「ねぇ、何で無視するの」


それは唐突だった。

放課後居残りをして、英語の宿題をしていると、隣の席から言われた。


「最近俺のこと無視してるでしょ」


無視するも何も、間島とはかかわりなく、普通の学生生活を送っているだけだ。


「ねぇ、久木さん、こっち見てよ」

「間島くんを無視したことなんてないよ」

目を合わせて答える。


「うそだよ。だって最近目合わないじゃん」


まわりにも他のクラスメイトが自習をしているのに、杏は冷や汗がでる。

小さい声で返事する。


「気のせいだよ。だって間島くん彼女いるでしょ」


思い切って言ったつもりだった。


「うーん、告白されたから付き合ったんだけど、何か久木さんのことが気になるんだよね」

ひょうひょうとそんなことを返してくる。

そのとき、ショートカットの女子が近づいてきた。

間島の彼女だ。きつい視線を杏に送ってくる。


「裕くん、帰ろう」

「えー、ちょっと待って、俺もう少し勉強していくわー」

「じゃあ、一緒に図書館行こうよ」

「え、図書館だと話せないじゃん」

「今さー久木さんに英語教えてもらっているの、ね、」


杏の教科書を見せながら言う。

「ほら、だから三咲は先帰っていいよ。また明日会おう」

そこまで言われて三咲、と呼ばれた彼女は、納得いかない顔をしつつも帰っていった。
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