視線の先には君がいた
「彼女ってなんなのかな。どーすればいいと思う?久木さん」


そんなことを言ってくる。

「やさしくしてあげればいいんじゃないの?」


杏はもう英語をするどころではなくなり、少ない脳みそをフル回転させ間島との会話をしていた。


「どうやって?」

「図書館で一緒に勉強するとか」


そうやって、先ほどのやり取りを揶揄すると、間島は笑った。


「久木さんって面白いね。あー、好きだわ―。こういう感じ」


てらいなく「好き」という言葉を聞き、杏はどきどきした。

そして、周りの人にきこえないように言う。

「私も好きだよ、間島君みたいな人」

じっと、彼の目を見る。

彼女になれなくてもいい。

今この瞬間を大事にしたい。

どんな会話だっていい。


そのことばにはっとしたように、間島は口をおさえる。

少し頬が赤くなっているようだ。

そして右の宙を見つめ、深呼吸をする。

そして真剣な目つきで、杏を見つめた。


「久木さん。少し待ってほしい」
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