白貝と柏木
帰りのバス、瑠璃ちゃんには寄る所があるからと告げて途中下車した。

ケータイで地図を見ながら、柏木のバイト先の倉庫へ向かう。

大通りの道を、横に一本入って、しばらくまっすぐ進む。

賑やかな大通りとは打って変わって、人通りが少なくて静かだ。

学生や子供の姿はなく、スーツ姿の人や作業着を着た人の姿が目に付く。
建物も、華やかな飲食店や商店が減って、事務所や倉庫が増える。

いつもは大通りの方しか歩かないから不思議な気分だなぁ…。


十字路を右に曲がると、壁一面真っ白なペンキで塗られた建物があった。

ここが第9倉庫…。

大きな入口は、シャッターが上がっていて、蛍光灯の眩しい光が漏れていて、中から物音が聞こえてくる。

入口の、コンクリートの短い階段を昇って、そっと中を覗いた。

10人くらいの男の人達が、重そうなダンボールを抱えて倉庫内を行ったり来たりしている。
みんな同じような服装をしていて、上はTシャツで下は青いカーゴパンツだった。
Tシャツは各自違うものだけど、カーゴパンツはみんな同じものだから、あれが会社から支給されるユニフォームなんだろう。

そこで、ダンボールを抱えてこっちに向かって歩いて来る柏木の姿を発見した。

いつもの制服じゃなくて、メタリカの黒いTシャツと青いカーゴパンツを着ている。足元は黒いスニーカーだ。

顔を上げた柏木に手を振ったら、柏木は目を丸くして驚いて、抱えていた重そうなダンボールを、スニーカーの爪先の上に落っことした。

「…っっっ!!!」

その場に蹲る柏木。
初めて見る柏木のちょっと抜けてる姿が可笑しくて、声を上げて笑う私。

「…おまえ…来たならそう言えよ…」
「ごめんごめん。仕事中に声かけていいのかよくわかんなくてさ〜」
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