白貝と柏木
04
翌日、登校してみると、私と柏木が付き合っているという噂はきれいさっぱり消えていた。
私をじろじろ見る子もいなければ、ひそひそ囁き合う子達もいない。
非常事態は完全に収束したみたい。

結局、柏木ファン達は、柏木の言葉を信じた。
まさに鶴の一声…。
柏木は鶴じゃなくてネコ科の肉食獣だけど…。

瑠璃ちゃんはやれやれと呆れ顔で首を横に振った。

「あたしが言っても半信半疑だったくせに、好きな男が言ったらすぐこれだもんねー」

何はともあれ、平和な学校生活を取り戻せて私は一安心だ…。
一件落着してよかったぁ…。



教室に入って、座席に着こうとしたとき、既に着席していた柏木と目が合う。
周囲にはバレないように、さりげなく「昨日はどうも、放課後にまた」という意味を込めて、小さく頷きながらアイコンタクトしてみる。
私の言いたいことが伝わったのか、柏木も見返して小さく頷く。
それからお互い視線を逸らして、顔を黒板に向けた。

なんか、みんなにはバレないように2人だけで秘密の遊びをしてるみたいだ。
可笑しくなって、口元がニヤける。

チラリと横目で柏木の横顔を見ると、机の上に肘をついて、隠すように口元に手を当てている。
その指の隙間から唇の端が上がっているのが見えた。

柏木も私みたいに楽しいのかな。
そう思ったら、なぜか嬉しくなってきて、ますます顔がニヤけてきた。
誤魔化すために下を向いても、ニヤけ顏はなかなか治まらなくて、顔を上げられるまで時間がかかった。


早く放課後にならないかなぁ…。
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