白貝と柏木
夢を見た。

夢の中では、目の前に柏木がいて、私を見つめている。

手を伸ばして、髪に触れると、私を見ていた切れ長の目を気持ち良さそうに細めて、口元を綻ばせる。
その表情に、私も笑顔になる。

髪から頬に手を移すと、柏木が頬擦りして、手の平に口付ける。


雨音に目を覚ました。

いつもの自分の部屋で、当然柏木の姿はどこにもない。


もう夢の中でしか、柏木に触れないんだ。

夢の中でしか、柏木に笑いかけてもらえないんだ。


窓の外は雨が降り続けている。


柏木に会いたかった。
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