甘い甘い一晩を君と
梓side
「ガシャーン」

やっちゃった、と思った。
目の前に落ちたマグカップの破片を見る。綺麗なまでにバラバラになってしまっていて修復は無理そうだ。


「どうした?」

直樹が台所に顔を覗かせた。そして顔を青ざめる。

このマグカップは直樹がとても大事にしていたものだ。相当ショックを受けたのだろう。

「ご、ごめん、手が滑って……」
怖くて直樹の目が見れない。

滅多に怒ることがない彼だが怒ると怖い。

私が前にこのマグカップ(食洗機使用不可)を食洗機で洗った時は結構怒られた。まあ、何度も言われたのにうっかりしてしまった私が悪いのだが。

そんなマグカップを割ってしまったとなれば雷は避けられない。
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