私と彼と兄と
▷▷ Episode 1
✿ 相川くん
「俺、華のことが好きだ。付き合ってほしい」
高二の夏ーーー。
私、三倉 華に初めての彼氏が出来たーーー。
「もー、相川くんったら!」
「悪ぃ、先に食べちゃった!」
学校の近くの喫茶店。
私の自慢の彼氏、相川くんが私の頼んだケーキを一口食べた。
「華がよそ見してっから!」
「よそ見なんかしてませーん」
「してますー。…ったく」
「ん?」
「…俺だけを見ろよ」
窓の外を眺めてばっかりいる私に相川くんはボソッと呟いた。
「………みる」
こんな何の取り柄もない私に相川くんは告白してくれた。
一途で、率直で、正直な相川くんが大好きだ。
「おーい、なにボーっとしてんだよ!」
「あ!ねぇ!二口目は許さん!」
私は相川くんの頼んだケーキを仕返し替わりに食べてやった。
「ちょ、おい!お前もやってんじゃん!」
こういうやり取りも本当に幸せだ。