私と彼と兄と



火照る身体を一刻も早く冷ましたくて、私はふぅ、と大きく息を吐いた。



「…まだ花火上がるまでだいぶ時間あるし、屋台まわろーぜ?」



私がこんなに焦ったりドキドキしたりしていたのに、相川くんは全くそんな事気付いていなかったかのように、爽やかな笑顔を向けながら言ってきた。

私はコクリと頷いて、静かに彼の後ろを歩く。



相川くんがまず最初に目をつけたのは、りんご飴の屋台だった。



「2個ください」



有無を言わせぬ早さで購入して、



「はい、華の!」



パッと私に一つ差し出してきた。



「ありがとう…」



久しぶりのりんご飴。

普段お祭りに行っても、好んでりんご飴を買ったことはなかった。


< 81 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop