さまよう爪
家路につく。
部屋の扉の前にある、物体が目に入った。
ごみでも置かれたのかと思い、おそるおそる肩に掛けたバッグの取っ手を握り締めながら近づいてみる。
電柱の外灯がうすぼんやり照らすの中、目を凝らす。
膝を抱えて、頭を伏せって、体育座り。丸くなっている。
それが人間だと認識できたと同時。
「すみれぇ?」
その声にハッとした瞬間。
とろん、とした焦点の合わない瞳。
間違いなく、酔っている。
「直人」
ちょっとどうしたの。待って。と言い終わらないうちに酔っぱらいとは思えない速さで近づいてきて、思いきり太い腕で抱き締められる。
「すみれだぁ」
ぎゅうっと、骨が軋むような強さ。
苦しい。息ができない。
「おまえにずぅっと無視されて寂しかったんだけど」
連絡もLINE既読つかねえし。
舌足らずな呂律の回らない口ぶり。
着信拒否し、IDはブロックしていた。
仕事のことはパソコンのメールでやり取りすればいい。
部屋の扉の前にある、物体が目に入った。
ごみでも置かれたのかと思い、おそるおそる肩に掛けたバッグの取っ手を握り締めながら近づいてみる。
電柱の外灯がうすぼんやり照らすの中、目を凝らす。
膝を抱えて、頭を伏せって、体育座り。丸くなっている。
それが人間だと認識できたと同時。
「すみれぇ?」
その声にハッとした瞬間。
とろん、とした焦点の合わない瞳。
間違いなく、酔っている。
「直人」
ちょっとどうしたの。待って。と言い終わらないうちに酔っぱらいとは思えない速さで近づいてきて、思いきり太い腕で抱き締められる。
「すみれだぁ」
ぎゅうっと、骨が軋むような強さ。
苦しい。息ができない。
「おまえにずぅっと無視されて寂しかったんだけど」
連絡もLINE既読つかねえし。
舌足らずな呂律の回らない口ぶり。
着信拒否し、IDはブロックしていた。
仕事のことはパソコンのメールでやり取りすればいい。