さまよう爪
――ああ、当たりの美容師を引いたなと思う。

少しでもめんどくさがったり馴れ馴れしかったり無意味にこちらを笑わせようとする人はいけない。

彼女はこちらの気持ちを汲み取ってくれていると感じる。

彼女の返事に続いてわたしは、だから美容室も変えてみようかなって。

今までは表参道のお店を使っていたんだけど。と話しをする。

そうなんですね、ではいつもより頑張ります。とクールな顔のまま言う彼女が妙に面白い。

それから具体的な髪型を相談して決める。

カラーチャートを見てわたしの髪質と相談しながら染める色を決める。

彼女の説明は簡素でとても分かりやすかった。

そうして全部が決まった。

あとは任せるだけだ。それで終わる。

新しい髪型になる。

想像するだけで気分がいい。

彼女が腰に着けたシザーバッグからハサミを取り出す。

細い手が荒れているけれど、腰も凄い細いなと思う。

ハサミがわたしの髪の毛に入っていく。

鏡の中には短い髪になりつつあるわたしが居る。

髪を切っている時間は思ったよりも短かった。

途中で彼女が何かを数度話しかけてきたけど、適当に対応すればいいものだったから安心した。

次にカラーを入れる。その後でカットの仕上げをする。

このほうが毛先が痛まなくていいとのこと。

カラー剤もヒアルロン酸が配合されているもので髪の毛や頭皮に優しいものだ。

色々な物を塗られたり被せられたり洗われたりして染髪が終わる。

まだ髪が塗れているのでどんな結果かは完璧にはわからない。
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