さまよう爪
ここで豆タイム。

モーニング時間以外でドリンクを頼むと、 小袋に入れられた豆菓子がついてくる。

昔は豆は食べ放題だったと聞いた気がするけれど、どうだったか。1人に小袋がひとつずつ。

最初は、ん? なぜ豆菓子? 珈琲に豆? いやいやチョコレイトならわかるけど、お酒のつまみみたい。と半信半疑だったが、少し塩味、噛むと甘味も出て、塩味と甘味が絶妙なバランスでついつい癖になる美味しさ。

「みそカツサンドです」

かわいい女性の店員がプレートを持ってきた。

すごく大きい。

横長のパンが3つに切られている。

1切れでコンビニのハンバーガー1個くらいの大きさ。

820円でちょっと高めだが、このボリュームなら納得だ。

「俺メニューで想像したより、大きかったのは初めて」と瀬古さんもびっくり。

濃厚みそダレが柔らかくてサクっとしたカツにからまって、あいだのキャベツとの相性もバツグン。

わたしは1切れ、瀬古さんは2切れ食べた。

かなりお腹いっぱい。

服の上からお腹をさする。

さて、腹ごしらえても済んだし話そうか。瀬古さんが切り出す。

ここは長居できるからいい。

「……あの」

瀬古さん。

「うん」

彼の声は優しい。

わたしはこの優しさにまた寄りかかろうとしている。最低だ。それがわかっていて、話そうとしている。最低だ。
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