さまよう爪
「ゆき子もなあ、元旦那の葬式なんだから、行ってもいいって俺は言ったんだよ。でも行かないって、頑張っててさ。でも、すみれさんは2人の大事な娘なんだから、すみれさんには実のお父さんとのお別れ、させてあげたかったんだろうね」

マサキさんの運転する車の助手席に乗り込むと、車はなめらかに発進した。

「喪主のほうには、俺からすみれさんが出席するからよろしくって話をつけておいたから大丈夫だよ。ただ、向こうの親族には一応、元嫁の娘が来てるっていうのは秘密だから、こっそりな」

「親族、ということは、父方の親戚が集まってるということですよね」

「そうそう。ただ、すみれさんのお父さんは、ゆき子さんと離婚したあとは、再々婚はしてないみたいだったな。初婚のときの息子さんが、喪主をするのだそうだよ」

初婚の息子。

「ということは、ええっと?」

「そう、すみれさんとは腹違いのお兄さんになるね」

わたしはひらめいた。血の半分繋がった兄がいるなんて、今までで一度も聞いてなかったけれど、パズルのピースの最後のひとつが埋まるように、突然理解した。

「……その人は、いくつぐらいなんですか」

わたしの声は、震えていたけれど、その反面心は不思議なくらい落ち着いていた。

うーんと。

「そうだね、ゆき子さんの話では、すみれさんより10歳くらい上だと聞いてるよ」





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