さまよう爪
などと考えながら出来上がったミートソーススパゲッティを大皿に盛りつけて、テーブルに並べた。

フランスパンも薄く切った。

余ったミートソースは小鉢に入れ、パンつけ専用だ。普通パンは皿に余ったソースでいただくものだが、家だからできることだ。

タコわさと炭酸水も忘れない。

音が無いのが寂しかったのでテレビもつけた。

久しぶりに見る女優が映っている。

わたしの記憶の中の彼女と画面越しの彼女の顔が一致しない。

「いただきます」

呟きながら、フォークにパスタをくるくると巻きつけて、口に入れた。

うん、なかなか美味しい。

お腹が本当にへっていたんだ。

手が止まらない。

フランスパンもソースに浸す。食べる。美味しいに決まってる。

切り分けすぎかと思ったけれど食べれる食べれる。

ちょっと味が薄い気もしたけど耐えられなくもない。でも、二口、三口と食べると、少しずつ薄味が気になってきた。どうしよう。

あ、タコわさを食べれば、辛さでちょうどいいかもしれない。

わたしは一度、炭酸水で口の中を流してから、フォークでタコわさを刺して口に入れた。

「ん…!!」

なんだこれ。

口の中に入れた途端に広がる生臭さ。ミートソースの濃厚な味と見事に喧嘩している。
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