さまよう爪
慌てて炭酸水で流しこむと、視界の端が少し滲んでいた。

泣いてしまうほどまずかったのか。

おかしいなあ。

どっちも美味しかったのになあ。

何で合わせるとこんな風になるんだろう。

涙を拭こうと、手で目をこすっていると、視界が更に滲んだ。

頬に冷たいものが流れ落ちる。

それを冷めかけのパスタ皿が音を立てずに受け止めた。

耳鳴りがしてテレビの音が聞こえにくくなっているのに、自分が啜り泣く声だけはよく聞こえた。
< 19 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop