さまよう爪





昔の夢を見ていた。

――お腹すいたな。

もう少し眠っていたかったけど、空腹に勝てずに頭から被っていたタオルケットを払いのけると、異変。

いつもの部屋と違う。

いや。

角度がおかしいだけだ。

そして角度がいつもと違うのはわたし自身だった。

背中に掛かったタオルケットごと体を起こすと
うつ伏せのままで寝てしまった理由を考えるより先にテーブルの上の合鍵が目に止まった。

その隣にちょこんとストラップが置いてある。

泣ぐ子はいねがー、で有名なお面のストラップだ。

もうちょっと女の子らしいのにしとくんだったかな。

取引先のキャンペーンで二つ貰った時に無理矢理、直人の財布につけたものだった。
< 2 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop