さまよう爪
わたしは観念して、靴下を両足とも脱いだ。

男がわたしの裸足のかかとをそっと持ち上げて、視線を足先に集中させる。

刷毛でひとぬり、ひとぬりされるたびに、くすぐったく、わたしの足が小刻みに震えるのを、彼は気づいただろうか。

もしかしたら、それすら愉しんでいたのかもしれない。

今思えば、悪趣味なのだけれど。

『はい、できた』

そう言われて、両足とも解放されると、わたしは思わず恥ずかしさに顔をそむけた。

きっと頬は真っ赤になっていただろう。

終わって見てからやっと、かなり自分ははしたないことをした、という気分がわきあがってきた。

『そんな顔しないで、自分で見てみろよ。綺麗に塗れたんだから』
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