さまよう爪
テーブルから身を乗り出して言ってきた愛流のかわいいこと。

「いいよ。行こう、食べよう」

話しも、こんなにあっさり返事できるのもあの荒れた夜に瀬古さんに気持ちを全部吐けたからかもしれない。

とても感謝している。

彼もまた今どこで何をしているのだろうか。

名前も知らない男と名前しか知らない男。

何か共通しているようで全く違う。

「あーそろそろお昼時間も終わりですねぇ。このまま寝ちゃいたいけどハミガキもしなきゃだし戻りましょうか」

愛流の声に、わたしも席を立つ。

みんな被らないように自然とトイレとキッチンに分かれ歯磨きをするが化粧直しもしたいのでわたしはトイレ派だ。

午後からは、頼まれた会議の資料を大量にコピーする仕事が待っている。
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