意地悪上司は私に夢中!?
クライアントの名刺を預かり、スマホで場所を調べながら電車に乗って20分。そこから徒歩10分。
なんでタクシーダメなのよ。
そんなところで経費削減しなくてもいいじゃない。
帰ったら永瀬さんに不満をぶつけてやろう、なんて思いながら、クライアントである『MIGA株式会社』の建物へ着いて、受付で担当の人を呼んでもらった。
しばらくロビーの椅子で待たされ、現れたのは、スラっと背の高い杉田部長という40代くらいの男性。
部長というくらいだから、もっと歳を取った恰幅のいいおじさんが出てくると思ったのに意外だ。
立ち上がってまずは深々と頭を下げた。
「ご苦労様です。申し訳ない、内容を少し見てしまったんですが…」
「いえ、こちらの不手際ですので。大変失礼いたしました」
斜め45度で丁寧にもう一度頭を下げて、両手で書類を受け取った。
「いや、早めに気づいてよかったですよ」
杉田部長は怒ることも嫌な態度をすることもなく、穏やかに笑ってくれた。
受け取ったのはうちのチームがミーティングの時に使った資料のようだ。
個人情報や会社の機密に関わるような書類ではないけど、こんなものがクライアントの書類に紛れていたら信用問題になる。
帰ってきて書類を永瀬さんに渡したら、般若のような顔をして保坂さんに説教を始め、保坂さんは何度も頭を下げて謝っていた。
そして私のところへ来て声を潜めた。
「どうだったんだ?先方はかなり怒ってたか?」
「全然大丈夫でしたよ。気にしていない様子でした」
そっか、よかった、と永瀬さんは安堵したように肩を落とした。
保坂さんは気が気でなかったに違いない。
穏便にすんでよかった。
なんでタクシーダメなのよ。
そんなところで経費削減しなくてもいいじゃない。
帰ったら永瀬さんに不満をぶつけてやろう、なんて思いながら、クライアントである『MIGA株式会社』の建物へ着いて、受付で担当の人を呼んでもらった。
しばらくロビーの椅子で待たされ、現れたのは、スラっと背の高い杉田部長という40代くらいの男性。
部長というくらいだから、もっと歳を取った恰幅のいいおじさんが出てくると思ったのに意外だ。
立ち上がってまずは深々と頭を下げた。
「ご苦労様です。申し訳ない、内容を少し見てしまったんですが…」
「いえ、こちらの不手際ですので。大変失礼いたしました」
斜め45度で丁寧にもう一度頭を下げて、両手で書類を受け取った。
「いや、早めに気づいてよかったですよ」
杉田部長は怒ることも嫌な態度をすることもなく、穏やかに笑ってくれた。
受け取ったのはうちのチームがミーティングの時に使った資料のようだ。
個人情報や会社の機密に関わるような書類ではないけど、こんなものがクライアントの書類に紛れていたら信用問題になる。
帰ってきて書類を永瀬さんに渡したら、般若のような顔をして保坂さんに説教を始め、保坂さんは何度も頭を下げて謝っていた。
そして私のところへ来て声を潜めた。
「どうだったんだ?先方はかなり怒ってたか?」
「全然大丈夫でしたよ。気にしていない様子でした」
そっか、よかった、と永瀬さんは安堵したように肩を落とした。
保坂さんは気が気でなかったに違いない。
穏便にすんでよかった。