意地悪上司は私に夢中!?
8時3分前。

私は覚悟を決めてバッグを手にし、立ち上がった。

エレベーターに乗ったら、当然ながらあっという間に10階に着いてしまった。

1005室。

階段から近いその部屋へ、重い足を向けて歩き出した。


8時1分。

もう時間は過ぎている。

永瀬さん…

おまじないのように彼の名前を何度も唱えてから、ぎゅっと目を閉じてノックをした。


コンコン

「はい」

足音が聞こえ、すぐに扉が開いて、中から顔を覗かせたのは少しはだけたガウン姿の杉田部長。

こういうのを、人はセクシーと言うんだろう。

だけど今の私には、もうその姿に絶望感しかわいてこない。

「よく来たね。入って」

いつもの穏やかな顔で微笑んでいるその姿にさえ眩暈がしてくる。

…助けて、永瀬さん…


「ちょっと!!!」

大声が聞こえてハッと振り返った。

化粧の濃いロングヘアの女性が腕を組んで仁王立ちしている。

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