独り占めしても、いいですか?
「日和!」



「透…」



凛とは別の方向から透が走ってきた。



「大丈夫か…⁉︎」



透が真剣な顔をして私の肩に両手を置く。



目線も私の位置に合わせてくれる。



「うんっ、何もされてないよ」



私は透にニコッと笑いかけた。



「悪い、すぐに行ってやれなかった」



そう言って透が目線を下に向ける。



悔しそうな顔と同時に、肩に乗っている手にグッと力が入った。



「ううん、ファンの子の方が大事だもん。

それに、凛が来てくれたから大丈夫だったよっ」



「………」



私の言葉を聞いて少しムスッとする透。



表情の変化はわかりにくいけど、少しだけ、口角が下を向いてる。



何か気に触るようなこと言ったかな…?



私は透の制服の袖を掴んで、少し首を傾ながら、



「…透?」



と名前を呼んでみた。



透の顔が、ムスッとした表情から、ふわっとした優しい表情に変わる。



よかった、怒ってはないみたい。


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