独り占めしても、いいですか?
私はプレートとオーダー表を片付けてスタッフ用の後ろのドアから教室を出た。



すぐにみんなが歩いて寄ってくる。



私はメイド用コスプレのカチューシャを外し、行列に並ぶ人達にチラッと目をやって



「みんな、今日はファンの子に囲まれてないんだね…?」



と言った。



教室で見た時にも思ったけど、Sunlightのメンバーがこんなに勢ぞろいしてるのに…誰も集まらないなんて、珍しい。



「学校にいる間はあくまでアイドルじゃなくて生徒だからね。

SNSやホームページで『文化祭中はそっとしておいて』って言ってるんだ」



「雰囲気が近づいちゃいけない感じになってるから、SNSなんかを見てない人も話しかけてこないよ!

……たまに視線は感じるけど、今のところ話しかけられた回数はゼロ !」



「日和も、今日は周りを気にしなくていい」



3人が事情を説明してくれた。



じゃあ今日は…みんなと周りを気にせず楽しめるんだ!



人生初の文化祭。



みんなと、普通の子みたいに、自由に楽しみたい。



考えてみれば、みんながアイドルとして有名になってからはこんな機会、無かったかもしれない。



最初のうちは街を歩いても問題なかったけど、いつからかみんなと歩けばすぐに注目されるようになってた。



1人ずつなら気づかれる確率は低くなるけど、その分みんな一緒にいられる時間は無くなっちゃうもんね…


< 371 / 721 >

この作品をシェア

pagetop