独り占めしても、いいですか?
「実は私達、愛のある結婚ではないのです。

いえっ、その…わ、私は…好きですけれど…」



自分で言っておきながら顔を赤くする。



本当に、こういうところかわいいな〜。



「とはいえ、政略結婚でもありませんわ。

昔、現当主…つまり私のお祖父様が、若い頃に直生のお祖父様に助けられたようでして…

命の恩人ということで、その時に孫の…私達の婚約を決めたみたいなんですの」



な、なんてお祖父さん…



私からしたら『私の人生を勝手に決めないで』って言いたいところだけど…



シェリーちゃんは直生君のこと好きになっちゃったんだもんね…



結果オーライ…なのかな?



「ですから、私は直生のことが…えっと、その…す、好きでも、直生には私への愛なんて存在しませんのよ…」



照れたいのか落ち込みたいのかよくわからない表情をする。



シェリーちゃんが他の席に座る直生君の方にチラッと目を向けた。



直生君はシェリーちゃんに背を向けているから、視線には気づかない。



その背中を見つめるシェリーちゃんの瞳が悲しそうに揺れた。


< 420 / 721 >

この作品をシェア

pagetop