独り占めしても、いいですか?
直生君が一歩踏み出したその瞬間…



「お待ちになって!」



シェリーちゃんが直生君の袖を引いて叫ぶように言った。



「ようやく…」



「そのままで聞いてくださいませ」



振り返りそうになった直生君を言葉で制する。



ここからじゃはっきりは見えないけど、泣きそうになっているのかな…?って思った。



シェリーちゃんの声が、ほんの少し震えている。



その声を聞いて、やっと私は本当のシェリーちゃんの心境を悟った。



シェリーちゃんは、直生君が自分のことを嫌ってるって思ってるんだ。



勝手に決められた結婚だから、仕方なく自分に付き合ってくれてるって…



これから言う言葉で、直生君にはっきり『嫌い』なんて言われたら…



きっと立ち直れない。



「私、お爺様に頼んで見ますわ」



「何をだよ」



「………私と直生の…婚約破棄…」



「は⁉︎」



シェリーちゃんが言い終える前に直生君が後ろを振り返った。



勢いよくシェリーちゃんの肩を掴んだ直生君だけど、そこには静かに涙を流すシェリーちゃんがいて…



気まずそうに肩から手を離した。


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