独り占めしても、いいですか?
「これが噂の…」



翼君が見えなくなったところで、凛が納得したように頷いて言った。



「噂って…?」



「『風の声を聞く男』って噂だぜ、あいつ。

風が吹くのを知ってるかのように加速するらしい。

しかも、ゴール付近でピンチになると、風が味方するように吹く。


だからチビの頃から負けなし」



「へぇ…」



『風の声を聞く』か…



私にはよくわからないけど、きっと翼君にはわかるんだろうなぁ…



会話の途中に出てきた、よくわからない言葉も、きっとそれに繋がっているんだと思う。



もちろん風のおかげだけで勝てるわけなんかないし、きっと翼君自身もすごい努力してるんだよね。



「翼君…すごいね…」



「ああ、素直に尊敬する…

まぁ、それとこれとは別だけどな」



…何の話?



「あんな奴のどこがいいんだよ」



少しムスッとして言った。



「……?

まあ、守ってあげたくなる感じはあるよね」



「そーじゃなくて…

…あいつのこと、好きなんだろ」



好き…



私が翼君を…好き?



「…へっ⁉︎好き⁉︎

違う違う!そんなんじゃないよ!」



あ、焦った…まさかそんな勘違いが起こるとは…



「…ならいいけど」


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