独り占めしても、いいですか?
人の波にのまれながら、なんとか命をつなぐこと30分。



ようやくステージが終わった。



アイドルに会いに行くなんて、もう二度としたくない。



「凛、大丈夫…えっ!凛!?」



気づいた時には凛はいなかった。



きっと人にのまれてどこかへ行っちゃったんだ。



小倉さんに伝えようとしたけど、熱が冷めきってないみたいでそれどころじゃない。



私の言葉なんて少しも届いていなかった。



私がなんとかしなくちゃ。



とは言っても、この人混みの中から見つけ出すのは不可能に等しい。



どこか高いところから全体が見えれば…



そう考えて目に入ったのはステージだった。



あそこなら高い位置だし、マイクだってある。



もうアイドルの出番は終わったんだし、少しくらいお邪魔しても子供の遊びで片付けてくれるはず。



私は人の間をかいくぐり、ステージに向かって走った。


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