独り占めしても、いいですか?
「そ、そんなにいい友達がいるなら、もうそれで十分でしょ⁉︎

なんで私なんか…!」



「『日和』って、呼んでくれたから」



「…は?」



「私のこと、凛達以外で、『日和』って呼んでくれたのは…

朱莉ちゃんだけだから」



たった1回だけど、嬉しかった。



この学校での私は『ひよ姫』でしかなくて。



凛達以外に、私を私として見てくれる人なんていなくて。



だからすごく、嬉しかった。



「はっ…なにそれ。

………しょーもない」



朱莉ちゃんが力なく笑って、ドサッと崩れ落ちる。



「私、バカみたいじゃん…」



私も、



「へへっ」



と笑って、私も朱莉ちゃんの隣に腰を下ろした。



「朱莉でいいよ」



「えっ?」



「名前、朱莉でいいって言ってんの。

私の負けだわ………日和」



それを聞いて、心の中がパアッと晴れ渡った。



「うんっ!

改めてよろしくねっ、朱莉っ!」



その日見た涙を私は一生忘れないと思う。



吹っ切れたように笑う朱莉の頬には一雫の涙。



それを太陽の光が照らしてきらりと光る。



その雫の中にはクロスレインボーが描かれていて。



この上なく綺麗だった。



私はこの瞬間のことを、きっと、ずっと忘れない。



そしてもう1つ。



この時の私は完全に忘れていた。



私達がなぜ、わざわざパンを買いに行ったのかを………


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