何度でも恋に落ちる
午前中の講義が終わり、真弓と共に学食へと向かった千夏は翼の姿を見つけた。




翼は1人で席に座り、眼鏡を掛けて何やらプリントを眺めている。


真剣な翼の姿に千夏が見とれていると、真弓が翼に話し掛けた。




「持田さん、隼人は?」

「…あぁ、隼人なら食券買いに行ってるよ」



隼人の居場所を聞いた真弓は、スキップをしながら食券売り場へと向かった。




「翼、何を真剣に眺めてるの?」



千夏は翼の向かい合わせの席に座ると、翼が眺めていた資料に視線を落とした。




「…留学?」

「そ。前回の試験、英語満点だったから教授に薦められたんだ」



翼は眼鏡を外すと背筋を伸ばし、首を鳴らした。




「翼、留学しちゃうの?」

「うん。でも3年生になってからの話だから、まだまだ先だよ」

「…そっか」



千夏は留学の資料を手に取ると、ただ呆然と眺めていた。


すると翼は鞄から何かを取り出しテーブルの上に置いた。



「はい、ココア」

「え?何で」

「ココア好きって言ってただろ?さっき自販機で見つけたから、買っておいたんだよ」



(冬に飲むあったかいココアが好きだって言ったんだけどな…)

そう思いながらも、千夏は嬉しそうにココアを受け取った。




「翼はブラックコーヒー飲むんだね」

「うん。俺、甘いの苦手なんだよね」

「そういえば昨日も紅茶に何も入れないで飲んでたもんね」



千夏はブラック缶珈琲を飲む翼を見て、翼情報を1つ取得した。
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