何度でも恋に落ちる
夏真っ只中の海は、カップルや家族連れなど沢山の人で賑わっている。



4人は空いているスペースにシートを敷き、荷物を置く。



千夏が浮き輪を取り出すと翼はそれを取り上げ膨らまし始めた。




「ありがとう、翼」



千夏が翼を見ると、翼は膨らまし口をくわえたまま笑みを返した。



翼に浮き輪を膨らませて貰った千夏は、翼と共に海へと浜辺を歩き出す。




「真弓達は泳がないの?」

「俺は焼く目的で来たから」

「それ以上黒くなってどうするんですか、隼人さんは。真弓は?」

「私は隼人のそばにいる」



オイルを塗りながら寝そべる2人を見た千夏と翼は、海へと向かった。



波打ち際に立つと、足の周りの砂をさらう波がくすぐったい。




「ちー、準備体操しないと足吊るよ?」

「大丈夫だよ。浮き輪で波に揺られてるだけだから」



千夏はそう言うと海の中に入っていった。


アキレス腱を伸ばし、手首と足首を振った翼は千夏の後を追う。




灼熱の太陽が照りつける下、心地良い波に体を委ねる千夏と翼。



子どものハシャぐ声や泳いでいる人の水しぶきの音が響く。




「はぁ。夏って感じだね」

「そうだね。実はここ、俺と隼人の地元なんだよね」

「え?翼の地元、湘南だったの?」

「実家はもう少し海から離れてるけどね」



千夏の浮き輪に腕を回している翼。



千夏は翼の地元を知れる事が出来て嬉しかった。




「ちーの地元はどこ?」


「私と真弓北海道民だよ。大学生になって上京してきたの」


「北海道か。雪が凄いでしょ?」


「凄いってもんじゃないよ。でも私、雪っていうか冬好きだなぁ」



地元を思いながら楽しそうに足をバシャバシャと振る千夏を翼が見つめていると、いきなり浮き輪から千夏が消えた。



「え?ちー!?」



翼が水の中に潜ると水中でもがいている千夏がいた。
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