何度でも恋に落ちる
暫く浜辺で遊んだ4人はホテルに戻り、食事と入浴を終え、初旅行の夜を各部屋で過ごしていた。



部屋に翼と2人きりになった千夏は、昼間の事を聞いてみた。



「…ねぇ翼。浜辺で会った男の人、知り合いだったの?」

「違うよ。全く知らない人」

「でも持田って呼ばれてたよ?」



千夏は窓の前に立ち、静かな海を眺めている翼の服を引っ張る。




「ねぇってば」

「…ちー。人には思い出したくない過去がある。それを無理に聞いたりしたらいけないよ」



翼に冷ややかな目で見下ろされた千夏は俯く。



「翼は…私に壁を作るんだね」

「壁なんて作ってないよ。…過去なんてどうでもいいだけだ」

「過去は大切だよ。過去がなければ今はない。…翼は過去に何があったの?」



千夏が翼に問うと、翼はベッドに千夏を押し倒した。

いきなりの事に千夏は固まる。




「…しつこいよ」

「…やめて、翼…。私はただ…」

「俺の過去はこんなんだよ」



翼はそういうと、無表情のまま千夏の体を触り始めた。


目の前にいる翼が違う人に見えて仕方がない千夏は、突然の恐怖に震える。




千夏が涙を流している事に気付いた翼は手を止め、優しく千夏を抱き締めた。




「…っ…ごめん、ごめんね、ちー…」



翼は千夏の震えが止まるまで千夏を抱き締めていた。
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