何度でも恋に落ちる
「ごめんね。彼女が妬くから俺の事、名前で呼ばないで。…それともう、俺に構わないで」



翼はそう言うと千夏の後を追った。




「…どうせ私は幼いですよーだ!色気もないしね」



千夏は人混みの中をブツブツと呟きながら歩いていた。


下駄で走ったせいか鼻緒が擦れて足が痛い。





年の差なんて気にしてないし、気にならない。


たった1歳しか変わらないもの。

1歳くらい大して変わらないよ。




「…なんで?なんで泣いてるの…私」




年の差は越えられない。



普段は気にしていなくても

こんな些細なことで年の差を感じてしまう。




たった1年という時間が翼との間に壁を作る。




なんでこんなちっぽけな事で悩む程、翼の事が好きなんだろう…。





やっぱり恋愛は面倒くさい。


こうやって傷付くくらいなら、誰かを好きになんてなりたくないよ。


彼氏なんていない方が…




「ちー!」



千夏が俯きながら歩いていると、後ろから手首を掴まれた。

後ろには息を切らした翼。




「1人になったら危ないよ。ちーは可愛いから変な男に狙われちゃう」

「…ねぇ、翼。翼は私の何を好きになってくれたの?」

「え?」




千夏は涙で潤んだ瞳で翼を見た。
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