何度でも恋に落ちる
「何って…。人を好きになるのに理由って必要?それを知る必要もあるの?」



確かに人を好きになる事に理由などない。


でも言葉にしてくれなきゃ不安なんだよ。




今は余計に…。




「隼人さんに紹介されたから?一人暮らしで寂しいから?…昔のように…誰でもよかったの?」



そう呟く千夏を睨み、一瞬悲しそうな表情を浮かべると翼はそのまま人混みに消えていった。




なんで何も言ってくれないの?

嘘でもいいから、不安を取り払ってくれる事を言って欲しかったよ。



やっぱり私は長続きしないんだなぁ…。


いつもそうなんだよね。




1人で不安になって
1人で抱えて


私は肝心な事を何ひとつ言わないのに相手には言葉を求める。



いつもそう。


愛されたい気持ちばかり膨らんでいって、愛する気持ちを忘れる。




なんでかな?


愛されたいと思うのはみんな同じなのに、私は自分の事しか考えられないんだろう。



愛されたいと想う分、相手を愛してあげられないんだろう。




「…翼っ。ごめんね、ごめんなさい…」



千夏は溢れ出る涙を拭いながら、祭りの会場から少し離れた人気のない公園へとやってきた。



遠くから祭りの音が聞こえる。




「こんな風になるはずじゃなかったのになぁ…。折角のお祭りなのに」



千夏は公園のベンチに座ると下駄を脱いだ。



鼻緒が擦れていた指の間は赤く腫れ、うっすらと血が滲んでいる。
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