何度でも恋に落ちる
翼は千夏の頭を撫でると、再び空を見上げた。



「ねぇ翼。来年もまた一緒に北海道に来よう」


「………来れたら…ね」




この時、翼が必ず来ようと言ってくれなかったワケを千夏は知らなかった。




「…空はさ、世界の何処までも繋がっているから、例えどんなに離れても空に話し掛ければ声が届く気がするよね」


「何それ。まるで私と翼が離れるみたいな言い方だけど」


「…例えばの話だよ。気にしないで」



翼が何気なく呟いたこの言葉を特に気にしなかった千夏。



幸せボケをしていた千夏は来年の春、翼がいなくなる事をすっかり忘れていたのだった。




「翼、寒いから中入ろうか」



体が冷えてきた事に気付いた千夏が翼のコートの裾を掴むと、翼は千夏の顎を上に向けキスをした。


冷たい唇が重なり合う。





「…ちー…好き。凄く好き」



しんしんと降り注ぐ雪に包まれながら呟いた翼の言葉は、立ちのぼる息と共に空に吸い込まれた。




これから選び難い選択を強いられるとは知らずに、千夏はただ幸せを感じていた。





その後、北海道の海の幸をたらふく食べ、酒を飲むだけ飲み散々騒いだ4人は翌日、げっそりした顔で東京に帰った。
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